ニコ・パスが切り開く“次世代の10番像”──レアル育成出身が示す新たなキャリアモデル

カルチョ

1. 若き才能が移籍市場を動かす理由

アルゼンチン出身でスペイン国籍も持つ21歳のミッドフィールダー、ニコ・パス(Nico Paz)。レアル・マドリードのカンテラ(育成組織)出身として将来を嘱望されながらも、2024年夏にイタリア・セリエAの新興クラブ、コモ1907(Como 1907)へ移籍しました。なぜ彼が名門を離れ、あえて挑戦的な選択をしたのか。そして今、彼がセリエAで見せるプレーがなぜ世界中から注目されているのか――その理由を探ります。

2. レアルからコモへ──衝撃のステップアップ移籍

2024年8月25日、レアル・マドリードは公式サイトで、ニコ・パスのコモ1907への完全移籍を発表しました。契約期間は4年、移籍金はおよそ600万ユーロ(約9.6億円)と報じられています。レアルは再買戻し条項および将来売却時の利益分配権を保持しており、若手育成と資産運用を両立させる形をとりました。

パスは移籍直後からチームの中心として活躍。2024-25シーズンはリーグ戦35試合に出場し、6ゴール9アシストを記録。続く2025-26シーズンも開幕から4試合で2ゴール3アシストというハイペースを維持しています。欧州メディアではすでに「セリエAの新たな宝石」と称され、プレミアリーグの強豪も関心を示しています。

3. クラブ戦略と個人キャリアが噛み合った選択

この移籍の背景には、コモ1907の明確なクラブ戦略があります。近年、コモは若手中心のチームづくりと「育成×即戦力化」を両立させる方針を掲げ、財政基盤を整えながらも新しいサッカービジネスモデルを模索してきました。

ニコ・パスの獲得は、その戦略の象徴ともいえる動きです。レアル・マドリードのカンテラ出身という確かなブランドと、21歳という年齢ながらすでにトップリーグで戦える技術と体格を兼ね備えており、コモにとって“成長と成果”の両方を期待できる選手でした。契約に再買戻し条項を盛り込んだのは、将来パスがさらにブレイクした際にレアルが復帰または収益を得ることを見越しての判断です。

一方のパスにとっても、コモへの移籍は「挑戦」と「成長」を両立させる理想的な環境でした。ビッグクラブでは試合出場の機会が限られがちですが、セリエA中堅クラブなら試合経験を積み、戦術理解・メンタル面の成熟を図ることができます。こうした「実戦を通して伸びる」キャリア形成の選択は、現代の若手選手の新しい生き方として注目されています。

4. 若手が“主役”になれる環境こそ価値

私の見解では、ニコ・パスのキャリアは「時代が変わった」ことを象徴しています。かつてはビッグクラブでチャンスを待つのが常識でしたが、彼のように自らの意志で“試合に出られる場所”を選び、実績を積む選手が増えています。

特にパスは、単なるテクニシャンではなく“万能型プレーメーカー”へと進化しており、中央でもサイドでもプレーできる柔軟性を持っています。そのため、どの監督の戦術にも適応でき、現代サッカーが求める「流動的な中盤」を体現する存在です。

また、コモというクラブで背番号10を任されていることも象徴的です。若手がクラブの中心に立ち、責任を負いながら成長していく構図は、選手本人にとってもクラブにとっても好循環を生み出します。彼のようなモデルが、今後のヨーロッパサッカーにおける“若手育成の理想形”になるのではないでしょうか。

他メディアが「才能」や「移籍金」に注目する中で、私が注目したいのは「環境と選択の正しさ」です。彼は単にステップアップを目指すのではなく、キャリアの“質”を優先しており、その意志が結果につながっている点にこそ価値があります。

5. ニコ・パスの次なるステージとは

ニコ・パスは今後、さらなる飛躍を遂げる可能性を秘めています。すでにイタリア国内だけでなく、イングランドやドイツの複数クラブがスカウティングを行っていると報じられており、移籍市場での評価は上昇中です。

ただし、彼がこれから重視すべきは“安定と継続”。短期的な成功よりも、1シーズンを通してチームを引っ張るリーダーシップを確立できるかが鍵になります。アルゼンチン代表での定着も視野に入る中、次の2年がキャリアの分岐点になるでしょう。

若手育成・クラブ経営・選手選択という三つの視点から見ても、ニコ・パスの存在は現代サッカーの潮流を象徴しています。彼の歩む道が、未来のスターたちにとって新しい指標となることは間違いありません。

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