2025年の バロンドール は、ウスマン・デンベレ(PSG)が初受賞を飾りました。
彼はチャンピオンズリーグ制覇に大きく貢献し、決定的な場面で存在感を放ったことで、世界最高の個人賞をつかみ取りました。
しかしその快挙は、イタリア・セリエAにとって非常に重い問いかけでもあります。
「なぜセリエAにバロンドール級のスターが育たないのか?」
「クラブとして、リーグとして、どこに足りないものがあるのか?」
以下では、デンベレ受賞から導かれる示唆、インテル・ナポリの現状、セリエAの課題、今後の期待という流れで掘り下げます。
デンベレの受賞が示すもの:個人の輝きとリーグの差
デンベレは PSG でのシーズン、単に数字を積んだ選手ではありません。
- 決勝ゴール、勝負の場面でのパフォーマンス
- チームを欧州最高峰の舞台に導いた貢献
- 戦術的な柔軟性とスピード、局面を変える力
これらが評価され、バロンドールを勝ち取りました。
この受賞には、**「国際舞台で輝ける個」が個人賞をつかむ」**という構図が強く反映されています。
一方で、これをセリエAで再現できるかというと、議論は簡単ではありません。セリエAのクラブや選手が国際的評価を得るには、複数の要素を超える必要があります。
カギとなるのは、「試合での目立ち方」「国際実績」「露出度」です。
国内リーグでいくら得点を重ねても、チャンピオンズリーグなど国際舞台でインパクトを残せなければ、個人賞レベルには届かないことが今回のデンベレ受賞で改めて浮き彫りになりました。
インテル:CL 準優勝の価値と限界
2024–25シーズン、インテルはチャンピオンズリーグ準優勝という結果を残しました。
ラウタロ・マルティネス、ニコロ・バレッラ、アレッサンドロ・バストーニらは、欧州クラブを相手にも十分通用するスキルを示した選手たちです。
しかし、クラブとしてチーム力を証明できても、バロンドール最終争いに名を残す選手を輩出できたとは言い難い現状があります。
個人賞においては、クラブの実績だけではなく「決定的な瞬間での圧倒的な輝き」が問われるため、インテルの選手たちもその壁に直面していると言えるでしょう。
このことは、クラブ強化だけでなく個人育成やメディア露出・ブランド力も並行して強化する必要性を示しています。
ナポリ:リーグ制覇とスターの不足
2024–25シーズンを制したのは ナポリ。
ロメル・ルカク、マッテオ・ポリターノ、スコット・マクトミネイらが活躍し、国内舞台では強さを見せました。
しかし、それだけではバロンドールに迫るには不十分な構図が露わになりました。
“リーグを制したクラブ=スター選手が個人賞を取る” という方程式は、国際舞台での実績と露出が突出していなければ成立しません。
このギャップは、セリエAが抱える構造的な課題でもあります。
国内リーグでの成功がすぐに国際評価に結びつかない、という点は、官能的な魅力やリーグ全体のブランド力強化の遅れを物語っているのです。
セリエAの立ち位置と欠けているもの
デンベレの受賞を振り返ると、セリエAは依然としてトップリーグの一角である一方、次のようなギャップを抱えていると言わざるを得ません。
- 絶対的なスターの不在
バロンドール候補になるような「決定力・突出した個性を持つ選手」が、セリエAに常在しにくい構造。 - 国内成功と個人評価の乖離
リーグ優勝やCL準決勝進出が個人賞に結びつきにくい。チーム成果が即座に個人評価に繋がるわけではない。 - 露出力とメディア戦略
プレミアリーグ、ラ・リーガに比べると国際的なメディア露出が弱い。デジタル戦略やブランド訴求力の強化が追いついていない。 - 選手流出と資源の偏在
才能ある若手選手が国外移籍を選ぶケースも多く、国内リーグで育てて発展させる環境に課題がある。
これらの構造的な課題をどう克服するかが、セリエA が再び個人賞レベルのスターを生み出すカギになるでしょう。
今後に期待したいこと:カカ以来のスターは現れるか?
最後に、セリエAから バロンドール受賞者が出た最後の例は、2007年のカカ(ACミラン)。
以来、16年以上が経過しています。クラブ・育成・経営が変化するなか、再びその栄誉を掴むスターを育てられるかは、イタリアサッカー全体にとって長年のテーマです。
期待される方向性としては:
- ユース育成の強化:プリマヴェーラや下部組織に投資し、トップチームで使える才能を育てる
- 国際舞台での成功継続:CL・欧州大会での継続的な成果が、個人評価のプラットフォームになる
- メディア戦略・露出強化:SNS・国際放送の露出を増やし、選手ブランド力を高める
- クラブ間格差是正:資金力の偏りを調整し、多くのクラブが競争力を持てるよう制度整備
もしこのような構想が現実化すれば、次のバロンドール受賞者がセリエAから現れる日も夢物語ではありません。
まとめ
- デンベレのバロンドール受賞 は、国際舞台での決定力こそが個人評価につながることを再確認した結果
- インテルの準優勝、ナポリの優勝 といったクラブ成功はあるものの、個人評価にまで結びついていない現実
- セリエAは依然として魅力的なリーグながら、「絶対的スター」が不在であるという弱点も
- 将来に向けて、ユース育成・国際実績・露出強化という三本柱が不可欠
16年ぶりの受賞者が誕生するか否か、そのカギを握るのはクラブとリーグの総合力です。
ファンとしては、セリエAが再び個人賞の舞台になる瞬間を、心から待ち望みたいと思います。


